むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんがおりました。
 おじいさんとおばあさんは仲よく暮らしていました。

 ある日のこと、おじいさんはいつも行っている竹林で竹を取ろうとすると、一本の竹がキラキラとかがやいていました。
 おじいさんが光っている竹を切ってみると、中から何とも小さなかわいい女の子があらわれました。
 おじいさんはおどろいてその女の子を家に連れて帰っておばあさんに世話をさせました。

 女の子を育てるようになってからおじいさんが竹を取りに行くとおなじように中が光っている竹を
 何度も見かけるようになりました。そのたびにおじいさんはその竹を切ってみると、中からたくさんの金が
 入っていておじいさんはそれを家に持って帰っておじいさんの家はお金持ちになりました。

 ふしぎなことに女の子はあっというまに一人前の姿に成長し、
 おじいさんたちはあれこれと女の子に着物を着せたりして名前もかぐや姫と名づけました。

 かぐや姫のウワサを聞いて結婚を申し出る男がたくさんあらわれました。そのたびにかぐや姫は断りましたが、
 中でも五人の貴公子はとくに熱心で、かぐや姫はそれぞれに難題をあたえました。

 「つばめの子安貝、火ねずみのはごろも、龍が持つ玉、お釈迦様の鉢、不死となるための枝を持って来たならば、
 私はその人と結婚するだろう」とかぐや姫は言いました。
 貴公子達はがんばりましたが、誰もかぐや姫のいうものを持ってくることはできませんでした。

 やがて、かぐや姫のウワサは帝にまでおよんで、帝みずからかぐや姫会いに来ました。一目見ると帝はすぐに求婚しました。
 それでもかぐや姫は求婚を受けようとしませんでした。

 八月のある夜、かぐや姫は縁側に座って夜にうかんでいる月を見て泣いていました。
 おじいさんとおばあさんが尋ねると、
 「今まで隠していてすいません。私は月の都の者なのです。前世の宿命でこれまでこの地で暮らしていましたが
 もう帰らなければなりません。次の満月の夜に月の国から迎えがやってくるのです」

 おじいさんとおばあさんはそれを聞いて帝にお願いすると、おおぜいの兵士が満月の夜にかぐや姫のいる家の周りを守りました。
 けれど、天からやってくる月の国の人達に兵士はおびえてしまい、かぐや姫はおじいさんとおばあさんに
 不老不死の壺と二人に宛てた手紙を最後にかぐや姫は月の国へと帰ってしまいました。


「手紙と壺は月の国に一番近いと言われた駿河の山の頂上で燃やされ、その煙は今でも雲の中へ立ち上っている、
 そう言い伝えられています…………。おわり」

「ふ〜ん」

 パタン、といい音をさせて本閉じる俺を見ているアルクェイドは、眠そうでもないのにベッドに潜り込んで話を聞いていた。

「何だよ、じっと人の顔見て」

「ん? 途中から何だか真剣に読んでるな〜と思って」

「そ、そうだったか? 自分ではそんな風に思ってなかったけど」

 俺はそう言ってもう一度絵本の表紙を見やる。確かに色々と思うところがあったのは事実だ。

「定番なような気もするけど、こういうのもいいのかもな……」

 ある意味最大の関門であった演目の選定もこれでいけそうな気がしてきた。

「志貴志貴ぃ、何の話?」

「今度学校の文化祭で劇をする事になってたんだ。何にも決まってない状態だったけど多分これで決まりだ」

「それって、もしかしてあたしのおかげ?」

「あぁ、ありがとうアルクェイド。そうだ、お前もやってみるか、劇?」

「え、いいの? いっつも学校に来るなって言ってるのに」

「授業中に来なければ俺だって何も言わないよ。それに練習とかは放課後だし、今回は部外者も参加オーケーなんだ」

「やったー! これで志貴と一緒にいれる時間がもっと増えるのね。あたし、頑張っちゃうから」

「ハハ……ほどほどに頼むよ。それじゃ、俺はそろそろ寝るから」

「うん分かった! じゃあ志貴また明日〜!!」

 こいつの事だからちょっとの事で大道具とかを簡単に壊しそうで恐いな……。そんな事を思いながら俺はアルクェイドを見送った。

 とにかくこれで八人集まった。とりあえず明日これでシエル先輩に報告しよう。そして俺は床に就いた。



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