「どうした秋葉、生理か?」

「…………」

「…………」

 ピィィィィン、と張り詰めた空気がこの部屋を……というか俺を支配する。

 うん。やっぱりこれは死亡エンドだったのかな?

「フフフフフ……」

 あ、何か秋葉が笑ってる。

「そうですか……そういう事ですか」

 しかも納得してるよ。

「分かりました。私もその演劇とやらに参加しましょう」

「……………………………………え?」

 貴方殺します宣言じゃなくて? 参加の決意表明?

「どうしました兄さん? 私の顔に何かついてますか?」

「いや、そうじゃなくて……さっきの聞いて何とも思ってないのか?」

「さっき? 先ほどの料理は下げてそれで終わりですが」

「…………ほっ」

 俺は大きくため息をついた。よかった、気がついてなかったみたいだ。

「では兄さん。私は仕事が残っているので失礼します、おやすみなさい」

         *         *         *

「……疲れた」

 秋葉達と別れてから部屋に戻り、すぐにベッドに飛び込んだ。
 天井をぼんやりと見つめながら今日の成果を確認した。

 言いだしっぺのシエル先輩、それに俺。参加してくれるという人は
 有彦(おそらく)、弓塚、秋葉、それに翡翠と琥珀さん。

「七人かぁ……」

 そういえば劇って何人くらいがちょうどいいんだろう。多いような少ないような、
 いまいち分からないな。それに男って俺と有彦しかいないじゃないか。

「やっほー、志貴ー。元気だった〜?」

「………………アルクェイド。窓から入ってくるなって言ってるだろ」

「だってぇ、門から入ろうとしても妹とかあのメイドとかがうるさいでしょ?
 あたしだって一応気を遣ってるのよ」

「はいはい。俺にはあまり気を遣ってくれないけどな」

 そう言って首だけ起こしていたのをもう一度ボフッとベッドに沈ませる。

「ねぇそれより志貴〜、絵本読んでよ」

「あ? 何言ってるんだよお前。いきなりどうしたんだよ?」

「いいじゃない、人間って寝る前にこういうの読んでくれるんでしょ?」

「子供相手にだけどな」

 どこから取り出したのか、それは表紙が彩り鮮やかにデザインされた十五センチ四方の絵本だった。
 その絵本のタイトルは……


 1.「かぐや姫」だった

 2.「ロミオとジュリエット」だった

 3.「白雪姫」だった



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