「では稽古初日といきますか!」
昨日と同じように放課後に集まりって晶ちゃんが丸めた台本をポン、と叩き皆を注目させた。
「では改めて配役を確認したいと思います!
かぐや姫:弓塚さつき
お爺さん:乾有彦
お婆さん:シエル
貴公子(石作の皇子):琥珀
貴公子(庫持の皇子):シオン=エルトナム=アトラシア
貴公子(阿部御主人):瀬尾晶(他の端役も兼任)
貴公子(大伴御行):遠野秋葉
貴公子(石上麻呂足):翡翠
帝:遠野志貴
月の使者:アルクェイド=ブリュンスタッド、レン
以上でいきます。役柄は事前にある程度お教えした通りです、皆さん各自で予習復習をしてください!
まずは皆さんには役柄を踏まえた上で今日一日、役作りに取り組んでもらいます」
「役作り?」
アルクェイドが首を捻って晶ちゃんの言葉に疑問を持つ。
「自分たちそれぞれが演じる役の気持ちや行動を自分なりに理解する事です。例え劇中に関係ないものを役作りで作っても
その役自身を形作ったものには変わりませんからどんな事でも構いません。今日一日色々な役者の人と相談しあって
自分の役を固めてみてください」
「それはどんな役の相手でも構わないのですか?」
「う〜ん、できればよく絡む人同士でお願いします。ですが一度も関わらないような役同士の人の意見も取り入れるのも
大事かもしれませんので。とにかく色んな意見を聞いてまわってみてください。台本は皆さん一通り読んできましたか?」
「は〜い」
「読んできました」
皆の様子を見てから晶ちゃんは各自取り組んでください、とだけ言って自由練習となった。
「秋葉。秋葉の役所はどのようなものなのですか?」
「そうね……私の役の貴公子はかぐや姫に龍の首の珠を課題に出された人で…………」
「ねぇシエル。月の使者って何するの? 餅つき?」
「このあーぱー! ちゃんと台本読んできたんですか!? まったく、貴方という人は…………」
「瀬尾様。瀬尾様は他の端役の兼任と書いてありますが他にどんな役が?」
「えっとですね、帝にお付きの召使の役だったりかぐや姫の噂を聞きつけてやってくる村人だったりですかね」
「うわー、難しそうですね。っていうか他の役をそんなにたくさんできるんですか?」
「ですが誰かがやらなければいけませんし何とかなりますよ」
自然とグループが出来上がってあれやこれやと自分や相手の役に物申している。
俺はといえば台本をまだ途中までしか読んでいなかったので教室の隅で一人黙々と読んでいた。授業中に読む気だったのだが
いつもの貧血で保健室に行ったおかげで時間が取れなかったのだ。
「………………」
そんなわけで皆から出遅れる事二十分、俺はようやくみんなの輪に参加しようとしていた。
よく絡む相手で話し合え、か……。といっても俺と一緒に演るのはかぐや姫ぐらいしかいないんだよな。
俺は教室を見渡してかぐや姫もとい弓塚の姿を探した。弓塚は有彦とシオンの三人で何やら真剣に話し込んでいた。
何かちょっと入りづらそうな空気だな…………でも他の役の人と話すのもなぁ。
俺は………………
1.思い切って弓塚達の輪に入る
2.他の人に声をかける
3.屋上にでも行って一人で練習しようか
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