「それでは三票目………………お」

 驚いたように開いた紙の内容を目で読む。そして、

「遠野先輩です」
「なっ…………」
「何で妹がー!?」
「ふっ、まぁ当然の結果ですかね」

 何か傍観を決め込もうと決めたら異常に面白いな、この三人。

「じゃ、じゃあ次行きますっ。えっと…………アルクェイドさん」
「よっしゃー!」
「出遅れた…………」

 あ、シエル先輩が落ちた。

「さくさくいきます。次は…………お、新しいですね。弓塚先輩です」
「え?」

 素っ頓狂な声を出したのは他でもない弓塚本人だった。よほど意外だったのか、口が開けっ放しだ。

「へぇ〜、さっちんがねぇ……」
「でもきっと立候補でしょう? それなら必ず一票入りますし」
「………………………………」
「まぁとにかく次です次!」
「あぁ、ハイハイ」

 シエル先輩に急かされて慌てて次の票を開く。

「はい、次はシエル先輩です」
「やりました!」

 (カレー以外の事では)珍しくガッツポーズを取る先輩。他の二人は舌打ちをせんとばかりに面白くない顔をしている。
 仲良くしようよ。

「中々飛びぬけてきませんね。では…………またシエル先輩」
「「ちっ」」

 あ、本当に舌打ちしたよ。

「ケ、ケンカは駄目ですよ!? 次は…………遠野先輩です」
「……………………」

 もはや騒ぐ元気すら起きなくなったのか、アルクェイドが口から煙を出している。

「残りも少なくなりましたね。…………弓塚先輩です」
「へぇ〜」

 思わず俺は場の雰囲気も考えずに感嘆の声を漏らした。

「「「……………………む〜」」」

 もちろん睨まれたけど。あれ、アルクェイド魔眼になってない?

「これで秋葉様、シエル様、弓塚様が二票。アルクェイド様と乾様と姉さんが一票です」

 これまで出てきた人の名前の下に正の字を書いていた翡翠が実況する。随分とばらけたもんだ。

「ではラスト二票です。これで落選が決まっちゃう人も出てきますね…………」
「………………」
「………………」
「………………」

 三人が固唾を飲んで晶ちゃんを見つめる。アルクェイドに限っては真剣さそのものだった。
 何しろ他の二人と違ってこれが自分の票にならなければ落選なのだから。

「……………………………………アルクェイドさんです」
「……よし」

 小さく重みのあるガッツポーズをしてみせる。他の二人はただ黙って周りを牽制していた。

「いよいよ最後ね」
「恨みっこなしですよ」
「そっちこそ後悔しても遅いですよ」
「最後の票を開けます」

 言っていよいよ最後の開票。

「………………………………………………………………………………………………」

 カサ、と紙が開く音だけが教室に響く。そうして、晶ちゃんが票の名を読み上げて……、

















「……………………………………………………………………………………………………弓塚先輩です」



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