「はい、それでは結果を発表します」
晶ちゃんの一言でざわめきが一瞬にして消え、水を打ったように静まった。
「それではまずは中堅どころのおじいさんとおばあさん役です」
「瀬尾、まずは主役を発表するべきじゃないの?」
「色々思うところがあって実は主役のかぐや姫役の票は開票してないんですよ。楽しみは最後に皆で楽しもうという事で」
「……まぁ先に瀬尾と翡翠だけ分かっていたら不公平ですからね」
では改めて、と咳払いをして集計した紙を眺めて一息で読み上げた。
「おじいさんに乾先輩、そしておばあさん役がシエル先輩です」
わずかなどよめきの中、俺は密かに納得していた。まぁ妥当な線だよな。ところが、
「異議ありっ!!!!!!!!」
「ハイ、何ですかシエル先輩?」
今までで一番気迫があるんじゃないかっていうくらいの挙手で晶ちゃんに物言う先輩。
「主役をやるのにおばあさん役はできません!」
もはや決定事項ですか、先輩。まだ開票してないって言ってたのに。
「それに関しては大丈夫ですよ。投票で複数の役に選ばれた時は本人の希望を優先しますから」
「あら、そうなんですか。それじゃあ問題はないですね」
と、何もなかったかのように席に座り直す。
「何勝ち誇ったような顔をしてるんですか、代行者。結果も出ていないのに」
「そうよーシエル。ぴったりじゃない、おばあさん」
「あなたに言われたくないですっ!!!!!」
「えーっと、続けていいですか……?」
そうして次は帝役の発表なのだが…………、
「ダントツで遠野先輩のお兄さんです」
「まぁそうですよね、もう男は一人しか残っていないんですし」
「私も入れましたし」
「あ、シエルも志貴に? あたしもあたしもー」
「私も志貴に投票しました」
「………………(コク)」
女性陣がさわいでる中、俺はうなだれていた。
俺はチョイ役でいたいのに……………………………………。
「はい、ではお待ちかねのかぐや姫の開票にいきたいと思います」
そうして、かぐや姫と書かれた箱が晶ちゃんの前に置かれる。翡翠は黒板にコレまでの結果を記していた。
さながら晶ちゃんが議長で翡翠が書記といったところか。
「ではまず一票目は…………」
緊張の一票目。女性陣、特にいつも仲悪いトリオは目が血走りそうなほど晶ちゃんの挙動を凝視していた。
四つ折りにされた紙が開かれる。
「琥珀さんです」
「「「えええぇぇええぇぇぇぇえぇぇええ!?」」」
「あらはー、照れますねー」
思惑とかけ離れた名を呼ばれて三人はコントよろしく椅子から転げ落ちた。
「納得いきません!」
「取り消せ〜!」
「やり直しを要求します!」
「いや、三人とも……まだ一票目だから」
「「「何!?」」」
「う………………」
なだめようとしても三人の目は殺気に満ちていた。だめだ、これは黙ってるしかない。
「…………では殺されないうちに二票目いっちゃいますね。次は………………え? えっと、入れ間違いじゃないですよね……
乾先輩って書いてるんですけど」
あぁ、俺のか。
「ハッハッハ! 誰だそんな面白いことやった奴は」
隣にいますが何か問題でも?
「今のところ三人とも横並びね」
「まぁ先に票を得るのは私ですけど」
「あら先輩、何を言ってるのかしら。冗談は年齢と体重だけにしてください」
あぁぁ、まだあっちでは水面下でバトルってるよ。
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