「……………………」
「……………………」
「……………………」
「…………えっとぉ、とりあえず時間止めますね」

 妙な沈黙を破ったのは晶ちゃんだった。それを皮切りにそれぞれが周りの人たちと話をしている。

「ねぇシオン、さっきの何だったんだろう……」
「真祖については私も研究中だから何とも。ただ興味深い生態ではありますね」
「瀬尾? 演者の一人がエチュード開始早々いなくなってしまったけどどうするの?」
「ん〜、運も実力のうち、とでも言いましょうか。今回は不運でしたけど、時間もそんなにありませんしこのチームのエチュードはお流れにしましょう」
「そんなぁ〜御無体なぁ……」
「あ、大丈夫ですよ。人となりで演技力はそれとなく分かりますし、稽古中でも配役の変更は可能ですんで」

 琥珀さんの訴えに慌てて付け足す晶ちゃん。稽古の演技如何では配役も変わることがあるのか。覚えておこう。

 とは言っても何となくこのチームって誰がどれくらい演技が達者なのか分かるよな。
 今までが今までだったから琥珀さんはダントツで演技力は高いよな、翡翠と取って代わっても違いが分からないんだから。
 翡翠はまず人前に出るのが苦手だからそれがネックだよな。もしかしたらこれを機に克服するかもしれないけど。
 レンは……喋らないっていうのがなぁ。パントマイムでもあるまいし喋らないで何かを演じるなんてできるんだろうか?
 問題はアルクェイドだ。あいつはきっと俺より下手だ。いや、下手というより演技という概念がきっと理解できないだろう。

「ではでは最後のチームといきましょうか。チーム女王と召使いさん、前に出てください」
「や、やっと私の出番ですか」
「秋葉、セリフとは違って歩調が乱れていますよ」
「あわわ、皆見てるよぉ……」

 さぁ、何だかんだでやっと最後のエチュードになった。
 このチームでは誰が飛び抜けるだろうか。順当にいけば秋葉だろう。

「さぁ、それでは最後というわけでちょっとレベル高くいってみましょう。お題は親友の転校、別れの電車のホームです!」
「一人が転校する役、他二人が見送る親友というわけね」
「どうしようか?」
「私は余った役でかまいませんが」
「ハイ、相談はナシでお願いしまーす! それではいい演技お願いしますよ、先輩方。スタート!」

 そうして、最後のチームの演技が始まった。俺は……



 雪.秋葉の演技に注目する

 月.シオンの演技に注目する

 花.弓塚の演技に注目する



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