「有彦ー、俺も混ぜてくれよ」
「遠野君。一緒にやりますか?」
「……先輩。何か俺の時よりやたら嬉しそうなんですけど」
「あら、そうですか?」

 誤魔化すように眼鏡越しの目が笑っている。俺もつられて笑うと、周りから異様な視線を感じた。

「…………?」

 辺りを見回すと、

「志貴さま……」
「あー、シエルずるーい。志貴ぃ、私たちのところに来なよー」
「…………」

 翡翠とアルクェイドとレンが恨めしそうな目でこちらを見ている。同じグループにならなかった事が残念だったんだろう。
 にしても俺なんかとやっても俺がみんなの足を引っ張るだけだと思うなのになぁ……。

「さぁさぁ、遠野君が入った所でパパッとやってしまいましょう。瀬尾さん、貴方は参加しないのですか?」
「あ、ハイ。私は一応皆さんの演技を見ていようと思います。舞台にも参加はしますけど私の希望の優先順位は下の方という事で」

 晶ちゃんは椅子にチョコンと座ってノートを開いてシャープペンをカチカチとノックしている。

「そうですか……」
「はい。何だかんだで演出はそれなりに負担がありますから。あ、二人ではやりにくいと思うんで、
 翡翠さん達とアルクェイドさん達のペアは一緒になってくれますか?」
「えー、メイドとやるのー?」
「申し訳ございませんアルクェイド様」
「レンさん、一緒に頑張りましょうねー」
「(コク)」

 そんなわけでチームが決まった。晶ちゃんが名づけたチーム名でいくと、

 チーム文福茶釜:俺(遠野志貴)、乾有彦、シエル先輩
 チーム女王と召使い:遠野秋葉、弓塚さつき、シオン=エルトナム=アトラシア
 チームバラエティー:翡翠、琥珀さん、レン、アルクェイド

「また思い出したくないものを……」
「やっぱり女王って……秋葉さんだよね…………」
「ちょっと!! なんか私たちのチーム名だけ適当なんじゃないのっ!?」

 今後晶ちゃんに何かの名付け親をしてもらうことは絶対ないな、と胸で強く思いながらも当の晶ちゃんは楽しそうに
 エチュードの進行を進めていく。

「それではまずはチーム文福茶釜さんからいきたいと思います」
「えっ? 俺たち?」
「志貴ー、頑張れー」
「遠野家を汚さない程度には努力してくださいね」
「と、遠野君頑張って!!」

 各々から送り出されて俺は思い足取りでシエル先輩達と一緒に黒板の前に立って皆と向き合う形になった。
 やばい、これってかなり緊張するぞ……練習でこれって本番だったらどうなるんだ?

「エチュードなんで、今からお題を言うのでそれに関する演技を五分ほど演ってみてください。
 コツは話の流れに沿ったり逆らったりする立ち位置のキャラクターを演じる事です。
 相手と面識のあるキャラを作るもよし、今が初対面という設定でもよし。色々考えてみてください」

 そんな事より今でさえ足がガクガクいっていてまともに立っていられるのも怪しいもんだ。

「何だかドキドキしますね」
「そうですねー」

 おいおい、何でそんな二人ともヘラヘラしてられるんだよ。こっちは一杯一杯だぞ。

「んー、そうですねぇ……じゃあお題は」


 1.医者と患者さんの診察
  「医者と患者以外のもう一人のポジショニングが重要ですねっ!」

 2.誘拐犯から身代金要求の電話が……
  「シリアスにもギャグにも持っていけますよねっ!」

 3.引き篭もり少年を学校の担任が家庭訪問で説得
  「引き篭もり少年の演技に注目ですっ!」



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